日本での標準的な太陽光発電プロジェクトの立上げは、以下のとおりです。
- 太陽光発電プロジェクト用地の選択
農地、保護林、文化的に慎重に扱うべき土地、国立公園や国定公園については、許可取得手続きが煩雑であるため、避けることをお勧めします。また、プロジェクトに影響を及ぼしかねない抵当、貸借または地役権といった登記済み権利の有無を確認するため、候補地に関する土地登記謄本の取得が必要となります。通常、建築許可や環境報告書は不要です。しかし、立地場所を管轄する法令が国の立場と異なることがあるため、県や自治体への問い合わせが必要です。土地の転換が予定される場合、都市計画法も検討に入れなければなりません。従って、電力網接続ポイントまでの距離や相互接続の時期や価格に加え、想定される査定評価、森林法、土地転換要件、排水、土木工事の予算が、プロジェクトの実現可能性の決定的な要因となります。理想的な場所が決定した時点で、賃貸借権、購入権または「地上権」を留保するため覚書が締結されます。
- 電力会社との事前相談
法的要件ではありませんが、太陽光発電プロジェクトの建設前に電力会社との協議を行う必要があります。ソーラーパネル、インバータ、配電図等の技術文書を添付の上、太陽光発電プロジェクトの建設用地や仕様が記載された事前相談依頼票を電力会社に提出することになります。各事例によって、追加書類やデータが求められることもあります。この検討には約1か月かかります。
- 電力会社との詳細相談
最初の相談後、太陽光発電プロジェクトの実施が決定しましたら、さらに詳しい検討に入ります。この段階での検討を行うにあたり、電力会社が調査料として21万6000円を請求するのが一般的です。標準的な検討期間は、大規模太陽光発電プロジェクトの場合、通常3~4か月前後となっています。
- 経済産業省への申請
検討プロセスに引き続き、経済産業省の再生可能エネルギー特別措置法第6条に基づき、太陽光発電プロジェクトの発電設備認定を取得しなければなりません。この認定は、必要書類を添付の上(特に構造図、メンテナンス体制確認書類や運転開始年月日等の証明書類を含む)、所定の申請書を提出して取得します。申請書の提出から設備認定の取得まで、1~2か月の期間がかかります。
- 電力網接続申請
同法第6条に従い、正式な接続検討申込書が電力会社に提出されます。具体的には、発電システムの種類、所在地、接続ポイント及び保証金について記載された書類を提出して行います。関連資材調達価格及び調達期間は、前段階の完了を経て、本段階の完了時に設定されます。この検討に約2ヶ月かかることがあります。
- 電力受給契約の締結
正式な電力網接続検討申込書を電力会社に提出し承認された後、電力受給契約が締結されます。現在、再生可能エネルギー特別措置法に従った電力会社の標準様式はありません。電力会社は、申込者に対して自社で用意した申込書を提示し、又は、申込者が自ら作成して提出した申込書に特段の拒絶理由がない限り、電力受給契約を承認するよう要求されています。この検討には、通常は1~2か月かかります。
- 賃貸借契約または地上権取得目的の契約
電力受給契約の締結に続く次のステップは、賃貸借契約、購入契約、またはその土地に太陽光発電プロジェクトの建設権を取得するための土地所有者との契約締結です。また、時には賃貸借権よりも地上権が優先されることもあります。これらの契約に基づいて取得する権利は、第三者に対して確実に対抗力を持つよう登記することになります。
- 立地場所の経済産業省(産業保安監督部)への建設計画の通知
建設に着工する前に、電気事業法に基づき、建設計画及び保安規程や主任技術者選任といったその他事項に関する事前通知が要求されます。計画の承認から建設開始日まで、30日の待機期間が適用されます。かかる通知は、出力2MW以下の太陽光発電プロジェクトでは不要です。ステップ1で述べたように、建築許可や環境報告書をはじめとする書類についても、建設開始前に、県や自治体レベルで提出が求められることがあります。この手続には、約1か月かかります。
- 設計・調達・建設(EPC)
上記の各ステップが完了すると、建設開始となります。なお、第6条の設備認定プロセスを経ず、太陽光発電プロジェクトの仕様を変更することはできません。
- 使用前自主検査及び安全管理検査
建設が完了したら、発電事業所は作動開始前に、設備の使用前自主検査を実施する必要があります。この他、発電設備は、安全管理検査に合格しなければなりません。これは、発電事業所の安全管理体制に関する書類審査です。安全管理検査は作動開始後に完了し、通常、約1か月かかります。